二つのシンポジウム報告2014/05/01

4月25日(金)の夕方から法政大学で「立憲デモクラシーの会」の旗揚げシンポジウムがあり、26日(土)には同じ法政大学のさったホールで「沖縄の問いにどう応えるか ―北東アジアの平和と普天間・辺野古問題」と題するシンポジウムが行なわれた。(IWJインターネット・ウェブ・ジャーナル 2014/04/26)
 
 両方のシンポジウムが法政大学で開かれたことは偶然ではあるか、理由のないことではない。前者は、奥平康弘さんとともに共同代表になった山口二郎さんが、今年度から中心メンバー法政大学に移り、そこにはもうひとりの中心メンバー杉田敦さんがいて、法政のボワソナード記念現代法研究所が共催で場所を提供してくれた。また、沖縄シンポの方は、法政大学には沖縄文化研究所があり(屋嘉宗彦所長)、普天間・辺野古問題を訴えるアピールを出したグループがシンポ企画を立てていたとき、共催を引き受けてくれたということである。
 
 ふたつはまったく別に準備されたものだが、奇しくも法政大学にはこうした企画を受け入れる人文社会学系の研究所がいくつもあり(大原社会問題研究所も法政にある)、今回二つの企画の受け皿になりえたということだ。それに、この4月からは、江戸文化研究者で率直な発言でも知られる田中優子さんが総長に就任した。田中さんがスゴイのか、法政がススンデいるのか、こういう人が「総長」(つい『総長賭博』などというかつての東映映画を思い出してしまうが)を張れる大学でもあるということだ。
 
 大江健三郎さんが最初の基調講演をしたということもあるが、沖縄シンポではその田中総長が、例の着物姿で冒頭のあいさつをしてくれた。
 
 わたしは両方のシンポに関わったが、この二つは別のものではない。
 「立憲デモクラシーの会」は、現在の安倍政権が、金融緩和からメディア規制から法解釈憲法解釈まで、あらゆる禁じ手を繰り出して日本社会を軍事化の方向に引っ張ってゆこうとする状況に危機感をもち、近代国家の基本ルールにしたがい、憲法に基づいて熟議で事を進めることを要求する学者たちの集まりで、とりわけ、時の政権の恣意で解釈によって憲法を空文化する「解釈改憲」に反対する、法学(とくに憲法学)、政治学、行政学等の学者が中心になっている。

 それに対して「普天間・辺野古問題を考える会」は、以前から沖縄のさまざまな問題に関わってきた学者たちが中心で、代表の宮本憲一滋賀大元学長は、日本の公害問題に取り組んで環境経済学を主導し、沖縄の基地問題にもその観点から取り組んできた大ベテランで、国際政治、開発経済、憲法学、行政学、歴史学、思想史などの専門家が加わっている。

 この二つがじつは直結しているのは、安倍政権が進める「解釈改憲」による「集団的自衛権」行使の第一の想定現場が尖閣諸島、ということは沖縄県であり、「立憲デモクラシーの会」が取り組む課題の具体的照準が沖縄に当たっているからである。日中対立を背景に「解釈改憲」を進めて自衛隊の軍事行動の歯止めを外すことは、「集団的自衛権」をもちだすまでもなく、「個別的自衛権」の発動だけでも、沖縄を再び前線にすることになる。辺野古新基地建設は、それが米軍のためであれ、じつは自衛隊が使うためであれ、沖縄諸島の前線化を想定している。

 言い添えれば、そこにも現在の日米間の意図の齟齬があり、アメリカが日本の自衛隊を活用したいのは「対テロ戦争」つまりはアフガンやイラクのような戦争を想定しての話だが、安倍政権は日米安保を対中戦略を軸に考えている。だが、今後の世界統治戦略のために中国との協調をかかせないと考えるアメリカは、じつは日中間の対立に引き込まれたくはないのだ。そこを日米安保で抱き付いて、TPPで譲歩してでも、アメリカに日中対立の後ろ盾になってもらおうというのが安倍政権である(だが、TPPで国をアメリカの多国籍企業に売り渡するようなことをすれば、この政権にとって守るべき「国」とは何か?ということになる)。

 とりわけインパクトが強かったのは我部さんの、東アジアの危機について、日本はアメリカに頼り沖縄に負担をおっかぶせて済ませるのではなく、「当事者意識をもて」という指摘と、島袋さんの、沖縄に凭れるのが日本の「病理」で、沖縄が日本に甘えるなどとは片腹痛く、日本こそ沖縄に頼らず自立することに目覚めよ、という呼びかけだった(これは、本シンポジウムの「衝撃」の要所を語った稲垣正弘さんのブログからのパクリだが、たしかにその通り「衝撃」だった。ただ、稲垣ブログではわたしが過大にもちあげられているので、面はゆい)。

 沖縄は2013年1月に全市町村長の署名をもってオスプレイ強行配備に抗議する「建白書」を政府に提出した。そのオール沖縄の抗議表明と名護市長選で再度示された民意を押し潰すようにして、その2日後に安倍政権は工事のための資材搬入を開始した。そしてそれをアメリカへの「ご進物」にしようとしたのである。しばらく前から沖縄はもう日本にも日本政府にも何も期待しない(見放す)ような空気が濃くなっており、様々なレヴェルで「自立」の道を探り、国際的な働きかけを広げようとしている。この会で発言した島袋純琉球大教授は、専門は行政学だが、今年住民投票を控えたイギリス・スコットランド独立事情を研究しているという。

 このシンポジウムも、そんな気配のなかで、日本の抱える「沖縄問題」の現状を確認し、世界からの見方の報告も受け(海外知識人声明の取りまとめをしたガバン・マコーマック氏)、さらに沖縄の観点からの現状認識と問題についての報告を受け(我部政明琉球大教授、佐藤学沖国大教授、島袋純・上記)、われわれが考えるべきいくつかのポイントについて5人の論者からの指摘があった。

 前日の立憲デモクラシーの会シンポジウムは約600人の人びとが参会し、300人収容の教室から別室にビデオ中継で伝えるという盛況だったが、この日も600人の人びとがさったホールを埋め、熱心な聴衆が会の緊張を支えてくれた。この模様はIWJ(インディペンデント・ウェブ・ジャーナル、岩上安身責任編集)のサイトで見られる。合計3本あり、最初のものは大江健三郎さん、我部正明さん、ガバン・マコーマックさんの講演、次が島袋さん、遠藤誠治さん(国際政治、成蹊大学)、川瀬光義さん(地方財政、京都府立大)、古関彰一さん(憲法史、獨協大学)、西川潤さん(開発経済、早稲田大名誉教授)、和田春樹さん(歴史学、東京大名誉教授)、3本目は最後の宮本憲一さんのあいさつになっている。ごらんいただければ幸いです。

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