2015年6月14日、何かが起こった日2015/06/14

 山口二郎が国会前のすばらしいアピールで55年前の6月15日を想起させていた。今日は6月14日、まだまったくクライマックスではないが、この日は節目になる予感がする(いや、何かが起こったのは6月4日の衆院憲法審査会での参考人・憲法学者3人が一致して審議中の安保法制は「違憲」と明言したことからだが、その効果がはっきり表れてきた)。

 午後2時から国会を25000人が取り囲み、安倍政権の「違憲立法」を弾劾する集会が開かれ、渋谷の宮下公園では午後5時から若者たちのグループSEALDsの呼びかけで3500人が集まり、日曜夕方の渋谷の繁華街を「アベ辞めろ、戦争反対」を叫んで行進した。

 国会包囲の人の環の厚さもなかなかだったが、そこには安倍政権への抗議の意志をもつ人びとだけが(それと機動隊が)集まっていた。組織の旗もいろいろある。ただ、アピールもそこだけにとどまる。

 ところが渋谷では、いっさい既存の組織に頼らない学生たちが呼びかけたにぎやかなデモを、道行く人びとが何ごとかと振り返っていた。外国人観光客もいる。みんな日本にはデモなどないと思っていただろうし、安倍政権なんてどこ吹く風で遊びに来ていたのだろう。そんな街を行き交う人たちが振り返る。えっ、そんなのあるんだ、アベっておかしいのかな、と思いだしたらめっけものだ。若者たちの行動はそんな「感染」や反応を引き起こしす。国会前からもかなり大人たちが流れていた。その大人たちにはどこかに諦めがないとは言えないが、若者たちは「本気で止める!」と言っている。そしてそのための行動にためらいがない。この行動には期待したい(期待というのは、ただ眺めるのではなく、支え手伝うということだ)。

 その日の7時のNHKニュース、拉致被害者家族集会、安部・橋本の悪巧み会談、そして香港での反政府デモ、それに大集会でもヒラリー・クリントンの出陣集会…。東京や京都(いや、この日、九州・四国・名古屋など、全国各地で集会があった!)での大集会は無視するが、中国の反政府デモは報道し、アメリカの大集会は報道する。あまりに露骨な報道選択で、ここまでくると、NHKの報道部もあからさまに安倍の言うとおりにすることで逆に、「検閲・自主規制」やらされてるんだよ、とアピールしているのかと思えてくる。

 だがその後で、NHKスペシャルの『沖縄戦全記録』を放映したのはよかった。内容は今のNHKでできるギリギリだろう。一方で、沖縄戦を記録した米軍のフィルムがあり(沖縄戦に50万の兵員を動員した米軍は、記録用に大量の撮影班も動員していた)、糸満市の住民の死亡記録があり、さらに復帰時に多くの人が初めて沖縄戦時のことを語った1000本に及ぶ録音テープが見つかった。そのすべてを使っての「全記録」だ。

 米軍攻撃の「無差別性」の強調や、日本軍の住民の関係に関する及び腰の言及など、これまでの「沖縄戦ドキュメンタリー」に較べて食い足りない点もあったが、それでも4月1日の米軍上陸から6月23日の組織的戦闘の終息まで、日毎の住民の死者数を軸にした状況の流れの跡づけは、沖縄戦の悲惨とその問題を浮かび上がらせるに十分だった。

 沖縄戦では、台湾防衛に兵力を割いた第32軍の兵員不足を補うために2万を超える住民が徴用されるが、その即席の兵士たちは銃器ももたず、竹やりと手榴弾だけで「斬り込み」に行かされたという。住民はいわば軍の「消耗品」として「自爆攻撃」を強いられたということだ。14歳以上の中学生も動員された。

 これは現在の国際標準用語でいえば、「カミカゼ」つまり「自爆テロ」だし、悪評高い「少年兵」だ。日本軍は住民にも「軍民一体、一人十殺」を要求して(とくに伊江島での話)「カミカゼ」をやらせていたのだ。何のことはない、当時の日本こそ「テロ国家」だったのではないか。死んだら「天国と70人の美女」とは言わないが「靖国に祀る」と言い、住民に竹やりと手榴弾で突撃させ、「人間の盾」にもする。そして「集団自決」も、お国のために進んで身を犠牲にしたとか、家族への「愛ゆえに」(曽野綾子)とか言い飾り、住民や下っ端兵士には「玉砕」を命じて自分たちは生き延びる。なるほどそれは支配層には「美しい国」(「神の国」)だろう。まったくイスラム国(IS)やアフリカのボコ・ハラムと同じではないか。

 こうして沖縄戦をよく見ると、当時の「大日本帝国」が今で言う「テロ国家」に成り果てていたということがよくわかる。安倍政権があらゆることを押しのけて実現しようとしているのが、そんな「テロ国家」だということにあらためて気づかせてくれただけでも、この番組は秀逸だったと言ってよい。

 一方で報道部は露骨に安倍政権の広報局になりきることでその現状を露呈させ、他方で制作部はできるかぎりのことをやっている。そうなるとやはり、NHKであれ何であれともかく個々のジャーナリストには頑張ってほしいと思う。

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