「論考2015」のまとめ、その他2015/12/28

 今年1年、共同通信の「論考2015」というシリーズを担当した。掲載されたのは全国の地方紙だ。

 年始に日本の置かれた状況(「ガレー船国家」に向かう)を書き、2月には年頭を騒がせたパリの事件と後藤さんら「人質」の悲報を受けて「テロとの戦争」について書き、3月は辺野古新基地新設強行に揺れる沖縄の状況(歴史の再確認)、4月は日本の社会を蝕む「雇用」と「法人」の問題、5月は中国にまったく背を向けたワシントンでの「戦後70年」首脳会談。

 6月は安保法制の異常と「抑止論」の虚妄、7月は安倍政権による「規範の私物化」、8月はSEALDsと憲法・民主主義意識、9月は安保法制論議から見えたこと(対米従属下の"威勢")、10月は「一億総活躍」と日本の「ブラック国家」化、11月は憲法空洞化と進む軍事化、そして12月は、戦争化する世界と「政治」の溶解(泥沼に沈む前に政治の回復を)。

 現代の世界(そして日本)で考えるべきテーマを、時事に絡めて1年間でいろいろな形で取り上げようと思っていたが、まさに今年は「安保法制の年」で、とくに後半はそのことばかりを論じることになった。いま紙面を使わせてもらうなら緊急性からして安倍政権の日本を問題化する他ないだろう、という思いだった。

 それでも、最後の12月分は、再び起こったパリ襲撃事件を枕に、グローバル化のもとで「テロとの戦争」になだれ落ちてゆく世界の危険な予兆と、それによって守られるとされる「文明世界」の抱えるカタストロフ(気候温暖化、核管理等)の予測のなかで、各地域での「〈政治〉の回復」にしか出口はないという、総論めいたことで括った。

 付け加えるなら、盲目の〈経済〉原理のグローバルな猖獗によって、押し流され傀儡化された〈政治〉――ポリスの運営――を、専門家(プロやテクノクラート)でない〈民衆〉(ふつうの市民と言ってもいい)の手で作り直すこと、それだけが希望であり、可能性だということである。日本にとっても世界にとっても。

 昨日ちょうどNHKでスペインの新しい政治団体ポデモスの躍進を紹介する番組があった(「ドキュメンタリーWAVE▽若者の声を政治に届けたい~スペイン議会選挙」)。イタリアには「五つ星運動」があり、ギリシアでは「シリザ」がすでに登場している。これらの新しい政治運動は、マルクス主義の影響をまったく受けていない。グローバル化がドラスティックに変えた経済による政治の溶解、それによる各国社会の社会性の解体、その惨禍のなかから登場し、その状況に生きる場から対応しようとする新しい政治運動だ。まだ十分な理論化はなされていない。理論化より現実への現場の対応が新しいものを作り出しているのだ(その点でも従来の社会主義運動とは違う)。

 日本でもSEALDsが登場した。これは恒常的な政治団体というより、「自由と民主主義のための学生緊急行動」だ。参院選後の解散もすでに表明されている。だが、SEALDsは日本に新しい民主政治の土壌を開き、政治のあり方を照らし出す役割を果たした。そこから先はまた別の運動がいろいろなかたちで現れてくるだろう。

※関連して、年末にお勧めしたい本を二点と、番外の報告を以下に挙げておきます。

*タイトルはイマイチだが、この軽便な本をかつての『毛語録』のように広めたい。ひとり一冊、岩波ブックレット『いまこそ民主主義の再生を!――新しい政治参加への希望』中野晃一、コリン・クラウチ、エイミー・グッドマン(C・クラウチの世界の現状把握には深く共感、中野晃一の政治分析も)

*『2015年安保、国会の内と外で、民主主義をやり直す』奥田愛基・倉持麟太郎・福山哲郎、岩波書店。この本に「政治の杭を打ち直す」という序文を寄せるチャンスをえた。今年の夏の出来事の意味を再確認させる鼎談。問題は違憲の安保法制だけではなく、それを通すメチャクチャな政治のやり方、「いい加減にしろ」ということ。

*まさに「いい加減にしろ」を合言葉にしたのが西アフリカはセネガルの「ヤナマール」運動。「ヤナマール」は「もううんざり、いい加減にしろ」という意味(フランス語を訛らせたセネガルの表現)。その運動の中心になったのがヒップホップ・グループの「クルギ(家)」。これがすでに20年の経歴をもつセネガル流の「新・政治運動」。
 グローバル経済のアフリカ侵蝕が生み出した「表現しコミュニケートする政治」の担い手。秋も深まった頃、このグループを東京外大の研究仲間(真島一郎・中山智香子)が日本に招き、東京外大の学園祭でライブ+シンポジウムを行うとともに、福島・仙台、沖縄でワーク・ショップを開いた。この秋、チョー刺激的で熱かった企画を何らかの形でまた紹介したいと思っている。とりあえず、以下の「真島一郎研究室」ブログに満載の報告をどうぞ。http://ichiromajima.blogspot.jp/

コメント

トラックバック