季節外れでも、雪は「自粛」を要求しない2020/03/29

「政府(都)が自粛を要請」という言い方がまかり通るのをみて、気分が悪くなるわたしです。お上が命じ、メディアが伝令よろしくそれを伝えると、ほらほら自分で止めないといけないんだと世間は応じ、出歩く人びとを後ろ指さして牽制しあう。「自粛」とはみずから進んで(自分の意志で)行動を辞めることだ。行政府がそれを要請するとは、個人の意思に手を突っ込むこと。行政府はそれを権力行使だとはしないから(言うとみんな進んで従う)、それに責任があるとも思わない(だが近代国家は働くことを禁じたら、カナダのようにそれを保障するものだ)。「自粛要請」とは、現代社会(新自由主義)の用語で言えば「自己責任」ということになる。言うこと聞けよ、ただし勝手にやめるんだろ、と。

 そんな気分の悪い3月末の日曜に、首都には季節外れの雪が降り、シンとした気配のなか(雪は「自粛」など要求しない)、はじめて私的公的「政治利用」なく日本で傾聴できる「コロナ対策」に関する意見をみました。イギリスでジョンソンが撤回した「集団免疫論」の日本版という話もありますが、いやいや…。何でもスタンダードと化している西洋的統治の論理に合わせる必要はない。

 以下です。東大法学部・米村滋人教授(医師)
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【新型コロナウイルス感染症について】
■■皆さんに呼びかけます。冷静な行動をお願いします。■■
■■手洗い・うがいなどをしっかりするように心がけて ■■
■■下さい。

私はこれまでも、コロナウイルス感染症に対する政府・専門家会議の対応を批判し、世間の風潮に懸念を表明してきましたが、ここ数日の動きは異常です。私は、医師として、一般の皆さんにあくまで適切な感染対策の実施をお願いするとともに、冷静な行動を呼びかけたいと思います。

・今まで日本は、ほぼ無策だった
私は、2月末に相次いで出された、学校全休・大規模イベント自粛の要請が感染対策として不十分だということを批判してきました。それは、感染症対策として意味がないことに加え、リスクの低い子どもや一部の国民に不公平な負担を強いる結果になるからです。
専門家会議は「クラスター対策」と言っていましたが、一部の目立つクラスターについて「自粛要請」しただけで、普通に満員電車や繁華街の狭い飲食店などの営業を容認していたわけですから、実質的にはほとんど感染対策になっていませんでした。

・「普通の感染対策」が何よりも重要
ところが、日本での感染者数の拡大はずいぶん抑えられてきましたし、今でも爆発的な増え方はしていません。これほど「クラスター対策」が不十分なのにこの状況になっている原因は、十分に説明されていません。
私は、手洗い・うがい・マスク着用という「普通の感染対策」に大きな意味があるからであると考えています。ヨーロッパで爆発的な感染拡大が起こっているのは、これらの基本的な感染対策が全く市民に浸透せず、誰もマスクを着用しないことが「文化的な問題」として片付けられてきたからだと考えています。私はかつてドイツに住んでいましたが、ドイツ人はフランス人やイタリア人に比べればまだしも衛生感覚があるものの、手洗いやマスク着用の習慣がないのは同じです。日本は、世界のどの国よりも、これらの基本的な感染対策が市民に根付いています。
専門家会議は、「クラスター対策」を過剰に重視していますが、全くおかしいと思います。医療機関は大変な「クラスター」です。狭い空間に多数の患者がいて、盛んに会話をしています。それにもかかわらず、大規模な院内感染は数えるほどの病院でしか起こっていません。それは、とりもなおさず、病院では手洗い・うがい・マスク着用等の感染対策が徹底して行われているからです。私自身、医師として、院内感染対策としては手洗い・うがい・マスク着用を徹底して行ってきましたし、一般の医師・医療機関も同じ考えで行動してきました。専門家会議は、これまでの一般的な医療機関の感染対策が無効であったとでも言うのでしょうか。

・「感染爆発の危機」という言い方はおかしい
これまでの日本の無策の状況を踏まえれば、もっともっと増えても良いはずの感染者が、ここまで少ないということ自体、驚異的なことです。今後、感染者数は次第に増えるでしょう。しかしそれは、今後爆発的に増えるということを意味するわけではありません。
これまで不十分だった「クラスター対策」を徹底するようにする、というのは、悪いことではあリません。不要不急の外出を控える、無駄に人の集まるところには行かない、というようなことは、やった方がよいだろうとは思います。しかしそれ以上に、手洗い・うがい・マスク着用などの「基本的な感染対策」をこれまで以上に徹底して行うべきです。そしてそれをすれば、過剰な行動制限をかけなくても、感染症のコントロールは十分にできるというのが私の見立てです。

・人類はコロナウイルスに敗北せざるを得ない
皆さん、「がんばればウイルスに勝てる」と思っていませんか? 「この1,2週間を耐えれば大丈夫になる」と思っていませんか?あえて言いますが、今回のコロナウイルスは、1,2週間耐えればいなくなってくれるような相手ではありません。そればかりか、そもそも人類が正面から戦って勝てる相手ではありません。どうがんばっても、感染の拡大を防ぐことは無理なのです。既にほぼ全世界に感染が拡大している状況が、それを証明しています。私たちは、「どうしたら被害の少ない『負け方』ができるか」を考えなければならないのです。
一時的に急激に重症患者が出現すれば、医療体制が追いつかなくなり、十分な医療が受けられない患者が出てきます。それは絶対に避けるべきです。しかし、ウイルスを完全に制圧し、「誰もこれ以上感染しない状態」を作り出すことはできません。感染の拡大のスピードを遅らせることしかできないのです。
むやみに行動制限をかけ続けると、私たちの生活が崩壊します。このウイルスの感染拡大を防ぐ取り組みは、おそらく、今後1年、2年は続くと思われます。その間、ずっと自宅にこもっていられるでしょうか。イベントや集会を禁止し続けられるでしょうか。
私たちは、爆発的な感染拡大を起こさず、かつ、何年も継続可能で社会を崩壊させない感染対策を目指さなければなりません。それは非常に難しいのですが、上で述べたとおり、カギは「基本的な感染対策」にあります。つまり、とにかく、手洗い・うがい・マスク着用を徹底するのです。

・マスク着用にも一定の効果がある
マスクについて、少し補足しておきます。一般的に、マスクには感染予防の効果はありません。しかし、今回のコロナウイルスに関しては、自分で気づかないうちに感染して他人に広げる感染者がいることが、感染を拡大させる大きな要因になっています。そのような感染を防ぐには、「全員がマスクをつける」ことが十分な対策になります。マスクは、自分を守るためではなく、「自分が感染していた場合に身近な人を守る」ためのものなのです。その意味で、私は皆さんに、マスク着用を呼びかけたいと思います。

・冷静な行動を
最後にもう一度言います。冷静に行動して下さい。そして、手洗い・うがい・マスク着用などの「基本的な感染対策」を徹底して行って下さい。大規模な行動制限は、短期間はできますが、長期にわたってはほぼ無理です。国民の皆さんが行動制限に耐えられなくなったときに、再び感染拡大の危機が訪れないようにするためにも、上の「基本的な感染対策」が重要なのです。ウイルス対策は何年にもわたって行う必要があるということを覚悟して、できることをしっかりやって下さい。

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