チュニジア博物館襲撃事件に関して2015/03/19

 1月初旬のパリでの週刊紙本社襲撃とそれに続いて起こったイスラム国による日本人処刑事件の記憶がまだ新しいいま、今度はチュニジアの国立博物館を訪問する観光客が襲撃され、19人の犠牲者に3人の日本人が含まれていた(その他に3人負傷)。

 キナ臭い気配がする。どこかで無差別銃撃とか殺傷事件が起き、その犠牲者に日本人が含まれていると、「テロは許せない」と拳を振り上げて見せ、それを口実に国を「テロとの戦争」体制に引き込もうとする風潮がいまの日本にはあるからだ。

 もちろん、こんな事件に巻き込まれた人はたいへん気の毒だが、日本人はどこにでも観光旅行に行くことができる。ただ、その旅行が安心してできるようにするために(「国民の安全を守る」ために?)、「テロとの戦争」が必要だというのはまったく手前勝手な話だ。

 こういう事件が深刻なのは、何よりまず現地の人びとにとってである。なぜいったいこのような事件が生じるのか、これはチュニジアやその周辺の人びとにとってどういうことなのか、チュニジアはいまどうなっているのか、それをまず考えなければならない。

 そのための材料をそんなに持ち合わせているわけではないが、信頼する友人のフェティ・ベンスラマがフェイス・ブック上に投稿した短い緊急のコメントを翻訳して紹介しておきたい。急ぎの短いコメントでとても丁寧とは言えないし、とりわけ最後が急ぎ過ぎだが、「アラブの春の優等生」と言われるチュニジアがいま陥っている危機に対する切迫感は伝わると思う。

◆バルド美術館の虐殺に関して緊急のコメント――

 チュニジアは不幸にして受難のとば口に立っているということを、われわれは、少なくともいくらかの人びとは十分に分かっていた。

 去る2月27日にチュニスの国立図書館で講演したとき、私は数日前に若者担当相が明かした数字を援用した。学校を出た100万の若者(4人に1人だ)が、職もなく、何の社会保障も受けずにいる。間違いなくそれが、サラフィー主義やジハード主義、軽犯罪、自殺その他を増殖させる絶望の温床になっている。

 トロイカ体制(イスラム政党ナフダを中心とした3党連立)の政府と、とくにそれを牛耳っている「穏健派」と称されるイスラム政党は、ジハード・テロリズムを利するためにあらゆることをしている。その証拠はいくらでもあって目を覆うばかりだ。

 ここ数か月も治安部隊が動員されていたにもかかわらず、国会に隣接するバルド国立博物館には何の警護もないままだったという事実が、この治安措置のザルぶりをよく示している。

 大半のチュニジア人は、チュニジアが内側からも外側からも極めて深刻な危険にさらされているこということに気づいていない。この危機に対する意識もなく、相当の手段や力を動員することもなく、要するに、「総動員」もせず、チュニジアは(一九九〇年代の)アルジェリアにも似た、いやおそらくはそれ以上の悲劇を経験しようとしている。アルジェリアには当時、リビアのような、国家もない戦争状態で、民兵たちが跋扈するような隣国はなかったのだ。政府は国民にほんとうのことを言わねばならない。ヨーロッパ諸国は、チュニジアをよそごとだと思って、自分たちを守ることばかりを考えてのらりくらりと言い逃れをするのをやめるべきだ。 (フェティ・ベンスラマ、3/19)

*( )内は補足だが、ついでに補足しておけば、しばらく前のデータでは、チュニジアは「イスラム国」に地域最大の3000人の参加者を出しており、隣国リビアはEUの軍事介入でカダフィ政権が倒れた後、内戦状態になり、そこで強力なイスラム主義勢力はチュニジアの組織とつながっている。

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